今回は個別銘柄ではないのですが、米国株式の「S&P500指数に連動するETF」について、僕なりに解説してみようと思います。投資信託との比較になるでしょうか。
S&P500指数に連動する投資商品は、ETFも投資信託も多数あります。
ETFには東証上場のETFだけでなく、米国市場のETFも高い人気があるようです。
このページでは、
- S&P500指数に連動する投資商品には、どういったものがあるのか?
- 投資信託、東証上場ETF、米国市場ETFには、どういった特徴があるのか?
- 投資信託の利点は?
- ETFの利点は?
などについて、解説したいと思います。
※あくまでも、やすふじ個人の感想です。「こういう考え方もあるんだな」程度に留めて、目論見書や運用報告書などをよく読んで投資判断をしましょう。
投資信託、ETFの信託報酬の違い
商品数が多いので一概には言えないのですが、信託報酬は東証に上場しているETFで0.077%、米国市場なら0.03%など、投資信託と比べれば信託報酬が低いETFが多いですね。0.165%のETFもありますけど。
東証上場のETFの信託報酬
コード | 名称 | 信託報酬 |
1547 | 上場インデックスファンド米国株式(S&P500) | 0.165% |
1557 | SPDR S&P500 ETF | 0.10395% |
1655 | iシェアーズ S&P500 米国株 ETF | 0.077% |
2558 | MAXIS 米国株式(S&P500)上場投信 | 0.077% |
2563 | iシェアーズ S&P500 米国株 ETF(H有) | 0.077% |
2630 | MAXIS 米国株式(S&P500)上場投信(H有) | 0.077% |
2633 | NEXT FUNDS S&P500(H無)連動型上場投信 | 0.077% |
2634 | NEXT FUNDS S&P500(H有)連動型上場投信 | 0.077% |
東証に上場しているETFで、S&P500指数に連動している銘柄はたくさんあります。
他にもそれっぽいものがありますが、配当貴族とかESGとか、ちょっと捻りがあったりします。
信託報酬に注目すると、一番低いものは0.077%で、投資信託よりも低い報酬に設定されている銘柄が多く見られます。
米国市場のETFの経費率
ティッカー | 名称 | 経費率 |
IVV | iシェアーズ・コア S&P 500 ETF | 0.03% |
SPY | SPDR S&P 500 ETF | 0.09% |
VOO | バンガード・S&P 500 ETF | 0.03% |
他にもたくさんあると思いますが、何かしら捻りがあったり、日本の証券会社で取り扱っている銘柄が限られていたり、僕がさほど興味が無かったりするので、代表的な3銘柄を挙げました。
こちらは信託報酬ではなく経費率と表されますが、東証上場のETFの信託報酬よりも更に低い経費率が目立ちますね。
S&P500指数連動型の投資信託の信託報酬
ファンド名 | 信託報酬 |
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド | 0.0938% |
iシェアーズ米国株式(S&P500)インデックス・ファンド | 0.0938% |
eMAXIS Slim米国株式(S&P500) | 0.0968% |
SMBC・DCインデックスファンド(S&P500) | 0.0968% |
My SMT S&P500インデックス(ノーロード) | 0.0968% |
つみたて米国株式(S&P500) | 0.22% |
Smart-i S&P500インデックス | 0.242% |
iFreeS&P500インデックス | 0.2475% |
NZAM・ベータ S&P500 | 0.2640% |
投資信託も多数あるので、信託報酬の低いものをいくつか抜粋しました。
信託報酬が低いファンドでは0.1%を下回るのですが、それでもETFの最安値と比べたら若干高くなっています。
東証ETFは単価が様々
コード | 名称 | 2022.9.2 終値 | 取引口数 |
1547 | 上場インデックスファンド米国株式(S&P500) | 6,066 | 10 |
1557 | SPDR S&P500 ETF | 55,560 | 1 |
1655 | iシェアーズ S&P500 米国株 ETF | 399.2 | 10 |
2558 | MAXIS 米国株式(S&P500)上場投信 | 15,980 | 1 |
2563 | iシェアーズ S&P500 米国株 ETF(H有) | 252.5 | 10 |
2630 | MAXIS 米国株式(S&P500)上場投信(H有) | 10,035 | 1 |
2633 | NEXT FUNDS S&P500(H無)連動型上場投信 | 2,587.5 | 10 |
2634 | NEXT FUNDS S&P500(H有)連動型上場投信 | 1,977.5 | 10 |
投資信託は自分で購入額を決められる
投資信託は購入金額を自分で決めて、基準価額によって取得する口数が変わります。
投資信託の基準価額は1万円前後、高いものだと5万円くらいするものもありますが、この基準価額は1万口あたりの金額です。
1口あたりの金額は1円前後、せいぜい数円です。
100円の投資では1口も買えない、ということは無いです。
なので、毎月1万円とか、毎日100円など、自分で決めた金額を投資することができます。
ETFは自分で投資金額を決められない
対してETFは市場価格というものがあって、「千円投資したい」と思っても、その値段で売る人がいないと購入することができません。
上の表に挙げたように、ETFは銘柄によって市場価格と取引口数が違います。
取引口数というのは、市場で取引する際の最小単位で、取引口数が10口なら10口、20口、30口といった数でしか注文することができません。
上の表では最安値はコード 2563 の 252.5円なのですが、このETFは取引口数が10口なので、最低購入代金は 2,525円になります。
それよりも安く注文することは可能ですが、極端に安い注文は取引が成立しないでしょう。
ETFは売買する時に証券会社に手数料を支払う
ETFの場合は株式市場での売買なので、購入金額だけでなく売買手数料も加わります。
売却時にも手数料を徴収されます。
頻繁に売買を繰り返していると、手数料の支払いで利益が無くなる場合があります。
しかし、1日の取引額が一定額まで無料の証券会社もありますし、特定のETFは売買手数料が無料の証券会社もあるので、自分に合った証券会社を選ぶことも重要です。
単元未満株、ミニ株、S株などのサービスを使えば、少額投資できる
単元未満株、ミニ株、S株などと呼ばれていますが、1株単位で売買できるサービスを利用すれば、取引口数が10口の銘柄でも1口単位で売買できるようです。
単価は安いけど取引口数が10口のiシェアーズETFでも、1口で売買できれば更に少額で投資できますね。
少額投資なら投資信託のほうが買いやすい
金融機関によって違いがありますが、投資信託は100円から投資可能です。
投資信託にも売買手数料がありますが、主にネット証券などですが、投資信託を購入する時の手数料が無料(ノーロード)の証券会社も多数あります。
少額での投資という点では、ETFよりも投資信託に分があると言えそうです。
米国市場のETFのメリット・デメリット
S&P500指数に連動するETFは東証に上場しているものも多数ありますが、米国市場で購入できるETFも多数あります。有名どころでは「VOO」とか「SPY」でしょうか。
米国ETFは経費率が低いが、売買時に手数料がかかる
米国市場のETFは東証上場のETFよりも信託報酬・経費率が低いETFが多数あるようですが、どこに手数料や税金が潜んでいるかわかりにくいので、僕は手を出していません。
米国市場のETFは「信託報酬」ではなく「経費率」と表記していますが、上の方にも書いてありますが、投資信託や東証上場のETFの信託報酬よりも低い経費率になっています。
証券会社によって違いがありますが、米国市場のETFを購入・売却する際には手数料がかかります。
購入時と売却時の2回、取引手数料を徴収されます。
円とドルを替えるにも手数料
それに加えて、円建てではなく米ドル建てなので、日本円と米ドルを両替する必要があります。
ここでも、購入時に円から米ドルに替える時と、売却時に米ドルから円に替える時の2度、為替手数料を取られます。
手数料だけでなく、為替で差益を得た場合には、その利益にも課税されます。
米国と日本の二重課税
後でも書いていますが、米国株式のETFを購入すると、分配金に米国で10%、日本で約20%の税金を引かれます。
東証上場のETFの場合でも日本と米国で税金を引かれるのですが、二重課税調整制度というものがあります。
日本と米国の両方で税金は引かれるのですが、日本の税率を超えた分は、特に何もしなくても取り戻すことができます。
米国市場でETFを購入すると、何もしなければ日米で合計約30%の税金が引かれます。
投資信託の手数料は見えないだけ
投資信託や東証上場のETFは手数料がかからないのか、というと、そんなことは無いと思います。
どちらも、信託報酬とは別に経費はきっちりと財源から徴収しています。
決算後に発行される運用報告書を見ると、売買手数料や有価証券取引税などの経費が書いてあります。
特に為替はいくらのレートで、両替時の手数料はどれだけ取っているのか不明なので、もしかすると割高になっているかもしれません。
米国ETFの強みは、ETFと為替の決済を分離できること
米国市場でETFを購入して保有することに利点が無いわけではありません。
米ドルと円の為替の決済と、米ドルとETFの決済。
その2段階に分かれていることで、決済のタイミングをわけることが可能になります。
投資信託や東証ETFは株高でも、ドル安なら利益が小さくなる
投資信託や東証のETFの場合、円から米国株、米国株から円、といった決済になります。
為替レートはいくらに設定されているのか不明で、運用会社の言い値ですね。
株式投資は安く買って、高く売ることで利益が得られるので、米国株が安い時に買って、米国株が高い時に売りたいものです。
しかし、米国株が安くても、そのとき米ドルが高値だったら、円から米国株を買うと高値になってしまいます。
売却時も、米国株が高値でも米ドルが安値なら、米国株から円になると安値になってしまいます。
米国ETFは株高で売却後、米ドル保有で円安を待てる
米国ETFに投資する場合は、円と米国株の間に、米ドルで保有する、という選択肢が生まれます。
米国株が高値で、でも為替は円高ドル安。
それなら、円を米ドル、米国株を米ドルに替えておいて、米国株が安くなったら株を買う、円安ドル高になったら円に替える。
米国市場のETF投資なら、株高だけど米ドル安で売却しても利益が出ない、といった場面で、ETFを売却してドル高を待つという選択も生まれてきます。
ただし、円貨決済を選ぶと間に米ドルを挟まずに、円からETFの東証ETF等と同じになるので注意が必要です。
投資信託の利点とは?
僕がETFではなく投資信託でS&P500に投資する理由なんですが、ETFは分配金に課税されるので、多少の信託報酬の差は覆ってしまうのです。
配当金等の収益を分配せずに再投資することで、特に長期投資では効率よく資産を増やすことができるはずなのです。
今回は図を作ってみました。
米国株式ETFの分配金再投資は、分配金に課税されて目減りする
ETFは分配金の約20%が税金で引かれてしまうんです。
NISA口座で保有していても米国の税金は非課税にならないので、10%は引かれます。
分配金が1%なら0.1%、2%なら0.2%目減りします。
これで投資信託の信託報酬を超えてしまうことが多くなると思います。
また、分配金額がETFの1口価格よりも少なければ、再投資ができません。
分配金を出さない投資信託は再投資効率が良い
分配金を出す投資信託は話が別になりますが、投資信託はETFよりも課税される回数が少ないので投資効率が良いのです。
売却時に差益に課税されるのは、ETFも投資信託も同じです。
信託報酬や経費率といった、見た目でわかりやすい数字の大小だけで比較すると、見えていないところで損をしてしまう。それが金融商品というものです。
ETFの利点とは?
分配金を再投資するなら投資信託のほうが効率が良いのですが、S&P500指数は株価の上昇だけでも十分な利益を狙うことが可能だと思います。
分配金の使い道は再投資だけじゃない
ETFの分配金は再投資するだけではなく、生活費に使ったり、債券やREITなど、株式以外の資産に分散投資することができます。
投資信託でも一部解約すればできることですが、ETFの分配金を使ったほうが楽ですね。
年数回の分配金で焼肉に行くとかも良いですね。投資額を増やして肉のグレードを上げるのも、投資へのモチベーションになるかもしれません。細かな効率アップだけが全てではないですよ。
分配金は1%程度、税金分の再投資効率は気にしなくても…
S&P500ETFの分配金は1~2%程度でしょうか。
税金で20%引かれても、0.2~0.4%くらいです。
1万円投資していたとすると、分配金にかかる税金は20円~40円ですね。
よほど高額を投資しているか、長期間の投資を行わないと、分配金にかかる税金は微々たるものです。
NISA口座以外では、結局利益に税金がかかるので、分配金再投資で得られる利益も大したことはないんじゃないかなーと思います。
僕はS&P500指数への投資は細かい効率を求めて投資信託を選びますが、NISA口座では、ということになりますね。
ETFは値下がりからの戻りの利益を狙いやすい
投資信託は購入の注文をしてから、約定するまでに少し日数がかかります。
最短でも注文の翌日以降になりますかね。
なので、株価の下落時を狙って購入の注文を行っても、約定する時には株価が高騰している場合があります。
画像はYAHOO!JAPANファイナンスのスクリーンショットですhttps://finance.yahoo.co.jp/
画像はS&P500指数の2021年5月~7月のチャートなのですが、株価は右肩上がりで上昇しているものの、ちょいちょい下落して、すぐに戻っています。
下落している期間が短いので、投資信託の定期買い付けでは下落時に安く買うことは中々タイミングが合いません。
下落時にスポット注文を出しても、すぐに株価が上昇すると、約定する時には高値になってしまいます。
ETFなら市場が開いていれば即時購入できるので、値下がり時を狙って購入して、株価が戻ったら売却して差益を得る、ということも可能です。そのまま保有して、更に値上がりを狙うこともできます。
投資信託の定期買い付けで高値買いが続いたので、僕は米国株価の下落時にはETFを購入して、戻ったら売却する、ということをやり始めました。
株価が戻るとは限らず、下がり続けることも考えられるので、投資信託の定期買い付けのほうが無難かなとは思いますけどね。
まとめ
- 米国市場のETFは経費率は低いが、税金や売買手数料で不利。
- 投資信託はつみたてNISAで保有でき、配当金・分配金の再投資効率が良いので、長期投資では高いリターンが期待できる。
- でも投資信託は注文してから約定までに日にちがかかるので、価格が大きく変動することがある。
- 短期で売買するなら、価格を見て取引できて、即時約定できるETFのほうが有利。
といったところでしょうか。
僕はつみたてNISAで投資信託を長期保有しながら、値下がり時にはETFを短期で売買しています。
僕のETFの運用状況はこちらのページからご覧いただけます→株式ETFの運用状況
投資信託の運用状況はこちらのページからご覧いただけます→投資信託の運用状況
※あくまでも個人の感想です。特定の投資商品等への投資を推奨するものではありません。
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