2022年1月、SBI・Vシリーズに新しいファンドが登場しました。
SBI・V・全世界株式・インデックス・ファンド。
低コストで全世界の株式に分散投資できる投資信託が登場です。
僕は個人的には新興国投資に対して否定的なので、米国株式と先進国株式のファンドに投資しています。
でも先入観を持って内容を見もしないで否定していては、大きな機会損失になってしまいます。
そこで、今回はこの「SBI・V・全世界株式・インデックス・ファンド」について、僕なりに分析、解説してみたいと思います。
- 低コストが売りのSBI・Vシリーズなので、もちろん低コストで運用される。
- 世界最大級の運用資産を誇る、米国のバンガード社が運用するETF、「VT」に投資する。
- 投資信託の買い付け手数料が無料のSBI証券限定なので、売買手数料などをぼったくられる心配がない。
- ETFの「VT」は100ドル程度、最低額が1万円を超えそうだけど、「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」なら100円から少額でも投資ができる。
SBI・V・全世界株式を大雑把に説明すると、こんな感じでしょうか。
このページでは、
- SBI・V・全世界株式インデックス・ファンドとは、どのような投資信託なのか?
- このファンドが投資する「VT」とは、どのようなETFなのか?
- SBI・V・全世界株式インデックス・ファンドのメリット、デメリットとは?
- 他の全世界株式ファンドと何が違うのか?
などについて、解説したいと思います。
※あくまでも、やすふじ個人の感想です。「こういう考え方もあるんだな」程度に留めて、目論見書や運用報告書などをよく読んで投資判断をしましょう。
目論見書はSBIアセットマネジメント社やSBI証券のウェブサイトなどで確認できます。
SBIアセットマネジメント社のWebサイトはこちら→http://www.sbiam.co.jp/
SBI証券の特集ページ→https://go.sbisec.co.jp/lp/lp_sbi_v_series.html
どんな投資信託なのか?
愛称は「SBI・V・全世界株式」です。
『FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(円換算ベース)』という指数に連動することを目標に運用します。
「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)」が投資対象
SBI・Vシリーズは、米国のバンガード社が運用するETFを実質的な投資対象にしています。
この『SBI・V・全世界株式』の場合は、「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」通称「VT」が投資対象になります。
世界中の株式を売買すると、手間や手数料がたくさん必要になります。
しかし、この『SBI・V・全世界株式』という投資信託は、米国の「VT」という1つのETFに投資対象を限定しています。
そのため、手間がかからず、低コストで運用できるのだと思います。
信託報酬は年0.1338%(税込)程度
この『SBI・V・全世界株式』の信託報酬は、「年0.1338%(税込)程度」になっています。
このファンドの直接的なライバルになると思われる『楽天・全世界株式インデックス・ファンド』の信託報酬は、「年0.202%程度」です。
年間で「0.0682%」くらいの差があります。
些細な違いに見えるかもしれませんが、長期間保有を続けた場合、複利的に積み重なって無視できない違いが出てくるかもしれません。
SBI・V・全世界株式 | 年0.1338% |
楽天・全世界株式 | 年0.2020% |
差 | 年0.0682% |
「VT」とは、どのようなETFなのか?
続いては、この『SBI・V・全世界株式』が投資対象にしている「VT」というETFについてです。
バンガード・トータル・ワールド・ストックETF。
バンガード社の全体の世界の株式ETFです。
「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」に連動する
全世界の株式に投資するインデックスには「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」という指数もあります。
eMAXIS Slim全世界株式などは、こちらの指数を採用しています。
この指数も、新興国を含めた世界中の株式に分散投資することができます。
しかし、この「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」が投資対象にしているのは、大型株に限られているようです。
「VT」が採用している指数は「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」です。
こちらは、大型株だけでなく、小型株も投資対象にしています。
大型株だけでなく、小型株まで網羅
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは約3000社に分散投資できるそうです。
しかし、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスは約9000社に分散投資できるのだそうです。
「VT」というETFを1つ買うだけで、世界中の約9000社に分散投資ができるのです。
6割が米国、新興国は1割程度
VTが投資している地域の割合は、60%以上が北米です。
「北米」なので米国とカナダですかね。
新興国市場は10%程度。
時価総額が大きい企業ほど保有比率が高くなるので、巨大企業が多い米国の比率が大きく、規模が小さい新興国市場は少ない比率になっています。
国名 | 投資比率 |
アメリカ | 59.5% |
日本 | 6.0% |
イギリス | 4.1% |
中国 | 3.3% |
カナダ | 3.2% |
フランス | 2.4% |
スイス | 2.4% |
ドイツ | 2.0% |
台湾 | 1.9% |
オーストラリア | 2.2% |
インド | 1.7% |
地域ではなく国別に見ても、米国が6割近いです。
2位の日本の約10倍近くもあるんですね。
「VT」の経費率は「年0.07%程度」
「VT」の経費率は「年0.07%程度」です。
「VOO」や「VTI」の「年0.03%程度」と比べたら高くなっています。
しかし、米国企業だけに投資するVOOやVTIと違って、VTは世界中の小型株にまで投資するのです。
この程度で済むのなら、安いものです。
この経費率は、『SBI・V・全世界株式』の信託報酬に含まれています。
VTの経費率、年0.07%を加算した後の信託報酬が、年0.1338%になります。
VTIほど値上がりしていないが、今後に期待
「VT」は2008年から2022年1月までに、2倍程度に値上がりしています。
VOOやVTIは運用開始から4倍くらいに値上がりしているので、少し物足りなさがありますね。
運用期間など条件が違うので、単純に比較するのは難しいのですけど。
分配金の利回りはVOOやVTIよりも、VTのほうが多少高いようなので、分配金込みの利回りではもう少し差が縮まりそうです。
「VTI」に投資できる投資信託の「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」については、こちらのページで解説しています。
過去を振り返れば、米国株式が大きく成長しています。
でも、新興国の今後の成長や、全世界への高い分散効果に期待するのも悪くないかもしれません。
『SBI・V・全世界株式』を選ぶメリットとは?
「VT」というETFを買えば、簡単に全世界に分散投資することができます。
だったら、追加の信託報酬を払ってまで、投資信託の『SBI・V・全世界株式』を買う必要がないのでは?
という疑問が出てくるかと思います。
それでは、「VT」ではなく『SBI・V・全世界株式』に投資する場合のメリットを見てみましょう。
ETFよりも投資信託のほうが少額で投資できる
投資を始めてみたい、と思っても、ある程度のまとまったお金がないと始められないようだと、なかなか手を出しづらいのではないでしょうか。
VTは最低投資額が1万円を超えてしまう
「VT」というETFは、1口で100ドルくらいになります。
1口あたり、1万円を超えてしまいます。
『毎月数千円の投資をしたい』と思っても、1口の金額には足りません。
SBI証券の投資信託は100円から
それに対して、SBI証券で投資信託を購入する場合の最少額は、100円です。
『SBI・V・全世界株式』は、「VT」よりも少ない金額でも投資することができます。
少額投資でも複利の効果が得られる
VTはETFなので、分配金があります。
そして、配当金や分配金は再投資することで、複利の効果が得られて、効率よく利益を積み重ねていける、というのは聞いたことがあるのではないでしょうか。
ETFは分配金の再投資が難しい
ETFを買っている場合、分配金がまとまった金額が貯まるまで、再投資することができません。
上にも書きましたが、VTは1口買うのに1万円くらいします。
1口の分配金は1年に数百円。
1回の分配金は100円あるかどうか。
分配金でVTを1口買うためには相当な金額を投資しているか、何年も貯めないと再投資できません。
投資信託は少額でも再投資できる
投資信託の場合、ファンド内で再投資してくれます。
自分が保有している分は1口に満たない分配金額でも、ファンドが再投資してくれます。
そのため、1口分の金額が貯まるまで待たなくても、効率よく再投資できて、複利の効果が得られます。
日本で課税される前に、分配金を再投資できる
VTの分配金を受け取ると、米国と日本で2回、税金を引かれます。
『SBI・V・全世界株式』でVTに投資している場合、日本では分配金を受け取らないので、その分の税金が取られずに済みます。
日本の税金が引かれる前の分配金を再投資できるので、自分でVTを保有して分配金を再投資するよりも効率が良いのです。
SBI証券ならポイント還元が受けられる
SBI証券で投資信託を購入する場合、カード決済を利用することでポイント還元が受けられます。
SBI証券で利用できるクレジットカードは、三井住友カードと、限られた提携カードだけですけど。
三井住友カードの投信積立で最大5%還元
三井住友カードで投信積立を行った場合、最大で5%のVポイント還元が受けられます。
(カードのグレードによって還元率が違います)
増額キャンペーンをやっていることもあるので時期によって変動するかもしれませんが、クレジットカード決済を利用することで現金・口座残高で決済するよりもお得に積み立てをすることができるようです。
SBI証券は「投信マイレージ」でもポイント還元がある
また、SBI証券には「投信マイレージ」というサービスもあります。
投資信託の保有金額に対しても、毎月ポイント還元が受けられます。
『SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド』の「投信マイレージサービス」におけるポイント付与率は、年率0.022%です。
SBI・V・全世界株式のデメリットは?
メリットは宣伝とかにも書いてあるでしょうから、改めて説明されなくても知っているかもしれません。
では、『SBI・V・全世界株式』のデメリットについても見てみましょう。
6割が米国で、分散効果が小さい
上の方にも書きましたが、「VT」は全世界に分散投資していますが、6割が米国株式です。
新興国株式は1割程度、欧州も2割に満たない。
『SBI・V・全世界株式』はほぼ100%が「VT」になるでしょうから、VTと同じ比率で投資することになります。
分散効果としては弱いように思います。
小規模市場の小型株にコストをかける必要はある?
わずか1~2%の投資比率の国で、その中の小型企業に、コストをかけてまで投資する意味がどれほどあるのか。
ちょっと疑問に思ってしまいます。
SBI雪だるま(全世界株式)のほうが低コスト
SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま(全世界株式))の月次レポートから引用
http://www.sbiam.co.jp/fund/report/sa_2017120601.html
SBIアセットはもう一つ、全世界株式の投資信託を運用しています。
『SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま(全世界株式)) 』
なのですが、月次レポートの組入比率を見ると、こちらは全米株式のVTIが半分ちょっとです。
米国を除いた先進国株式のETF(SPDW)と、新興国株式のETF(SPEM)にも投資しています。
雪だるまはVTIを組み入れて経費を抑えている
同じ指数に連動することを目標にしているので、結局は似た比率で投資することになります。
でもETFの経費率は、VTに100%投資するよりも低く抑えられています。
ETF ティッカー | 経費率 | 保有比率 | 経費の割合 |
VTI(全米株式) | 0.03% | 60% | 0.018% |
SPDW(米国除く先進国株式) | 0.04% | 30% | 0.012% |
SPEM(新興国株式) | 0.11% | 10% | 0.011% |
雪だるま 合計 | 0.041% | ||
VT(SBI・V・全世界株式) | 0.07% | 100% | 0.07% |
「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」も複数ETFを組み合わせ
「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」は以前はVTに100%投資していましたが、2022年4月に組入ETFを変更しています。
全米株式・VTIと、全世界株式(除く米国)・VXUSを組み入れることで、ETFの経費率を下げています。
SBI雪だるま(全世界株式)の信託報酬は「年0.1102%程度」
雪だるま(全世界株式)の信託報酬は「年0.1102%程度」で、『SBI・V・全世界株式』よりも低コストです。
この信託報酬はあくまでも目安で、ETFの経費+0.0682%の合計が「年0.1102%程度」のようです。
『SBI・V・全世界株式』はETFの経費+0.0638%の合計で「年0.1338%」です。
SBIの取り分は雪だるまのほうが若干高いようですが、ETFの経費合計が低いぶん、雪だるまのほうがコストが低くなる見込みです。
ファンド名 | 信託報酬 |
SBI・V・全世界株式 | 年0.1338% |
雪だるま(全世界株式) | 年0.1102% |
差 | 年0.0236% |
ただし、雪だるま(全世界株式)は複数のETFを組み合わせているので、比率調整のリバランス時に若干の売買手数料がかかります。
その分経費が増えて、信託報酬の差ほどの開きは出ないかもしれません。
全世界に分散しているのに、全てがドル建て
VTは米国のETFです。
ドル建てです。
せっかく全世界に分散投資しているのに、ユーロ建ての株式も、日本円の株式も、すべて米国ドル建てになります。
米ドルの為替の影響を受けてしまいます。
ユーロ円の為替に変動が無くても、ドルの為替が動けば欧州株の時価総額にも影響が出ます。
他国の通貨がどうであれ、最後は米ドルと円の為替次第です。
米国経済の景況を強く受けることになるため、せっかくの全世界への分散効果が台無しになっている感じがします。
利益を米国に納税して3重課税に
VTは米国のETFなので、分配金やETFを売買して利益を得たら、米国に納税することになります。
世界中に分散投資しているのに、その全ての利益に対して、米国に納税するのです。
『SBI・V・全世界株式』は日本の投資信託なので、利益が出たら日本にも納税が必要です。
世界中で利益に納税して、米国でも納税して、そして日本でも納税することになります。
3重課税です。
現物株式の投資信託のほうが、投資効率は良い
ETFではなく、現物株式に投資する投資信託なら、ETFの分配金への米国課税は無くなります。
米国の課税が減る分、現物株式に投資する投資信託の方が、投資効率は良くなります。
現物株式でVTと同等の運用を行う日本の投資信託は、なさそうですけど。
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)などは現物株式に投資していますが、大型株だけで小型株には投資していません。
多少税金を多く払ってでも、小型株にも投資できるETFを使ったファンドを選ぶか。
税金による目減りを減らすために、大型株だけのファンドを選ぶか。
そこは好みの問題なのですが、VTの分配金がそこそこ高いぶん、税金によるリターンの差は大きくなりそうです。
NISA口座で非課税にできるのは、投資信託を売却した際の日本の税金だけです。
SBI証券でしか取り扱っていない
『SBI・V・全世界株式』はSBI証券限定での販売になっています。
他の証券会社、金融機関にNISA口座を開設していると、『SBI・V・全世界株式』を非課税で保有するにはSBI証券にNISA口座を移す必要があります。
SBI・雪だるま(全世界株式)なら、大手のネット証券なら取り扱っているようです。
まとめ
僕の考えでは、米国株式に投資する際に米国ETFを利用するのはコスト面を考えれば理にかなっているかと思います。
でも、米国以外に投資するのに米国ETFを利用するのは、むしろコストが増加しているように思います。
しかし、残念ながら他の日本の投資信託では海外の小型株に投資するファンドが少なくて、大型株に偏ってしまう…。
コストや税金が増えても小型株に投資できることを選ぶなら、このファンドも選択肢に入るのではないでしょうか。
〇『SBI・V・全世界株式』のメリット
- ETFよりも投資信託のほうが少額で投資できる。
- 少額の分配金でも再投資できて、複利の効果が得られる。
- 日本で課税される前に、分配金を再投資できる。
- ポイント還元が受けられる。
投資対象のETFを自分で買うよりは、メリットがある。
SBI・Vシリーズはどれも似たような評価になってしまいます。
同じETFを投資対象にしている他社の投資信託よりも、信託報酬は低いというのもメリットですね。
●『SBI・V・全世界株式』のデメリット
- 6割が米国で、地域面での分散効果が小さい。
- 全世界に分散しているのに、全てがドル建てになる。
- 世界中に投資した利益を米国に納税する。
- SBI証券でしか取り扱っていない。
時価総額が大きな企業ほど投資比率が高くなるので、どうしても米国企業に偏ってしまいます。
そして、ETFがドル建てなので、米ドルが急落したらETFの価値も急落してしまいます。
分散効果としては、微妙と言わざるを得ないですね。
それに米国の税金。
大型株だけに投資することになりますが、現物株式に投資する日本の投資信託のほうが、欧州株をユーロ建てで持てる分、分散効果は高くなるように思えます。
新興国株などは、決済にドルを使うかもしれないですけど。
為替の面を逆に言えば、米ドルが急騰すればETFの価値も急騰します。
でもそれって、米国株式で良いんじゃないですかね。
VTだって、リーマンショックでは大きく価格が下落しています。
米国企業だけが経済危機で傾いて、他国の企業は順調、ということは考えにくいです。
僕の投資信託の運用状況は、こちらの投信積立運用状況ページで見ることができますので、興味がありましたら是非ご覧ください。
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