このページは2022年5月13日発表の2022年3月期末決算について書かれたものです。
2022年8月5日発表の2023年3月期第一四半期決算については、別のページに簡単な感想を書いていますので、そちらのページもよろしくお願いします。
2022年5月13日に、<8893>新日本建物の2022年3月期の決算発表がありました。
少々時間がたってしまいましたが、今回はこの新日本建物の決算について見てみたいと思います。
簡単にまとめると、こんな感じです。
- 低金利で資産運用マンション等の売上が好調で、前年から売上高が増加。
- 好条件の土地は地価が高騰、資材の高騰もあって費用が増加。
- 売上の増加率に比べると営業利益、経常利益の伸びは低いが、純利益は伸びている。
- 2023年3月期の予想配当金は22円→26円へと増額予定。
新日本建物は東証スタンダード市場に上場している不動産会社です。
不動産業ですが、土地や建物を転売したり、仲介したりして手数料を稼ぐ業態ではないです。
土地を買って、建物を建てて、売る。
主に首都圏で資産運用型のマンションを1棟一括で売却しているそうです。
予想配当金利回りが5%を超える高配当銘柄で、2021年は配当金権利日以外ではあまり株価が変動しませんでした。
2021年は3月前後に株価が急騰、そして急降下しましたが、2022年の3月はあまり動かず、少し上がって少し下がる程度でした。
そんな新日本建物について、簡単にですが見ていきたいと思います。
売上高は前年比23%増加、純利益は27%の増加
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | |
2021年3月期 | 15,794 | 1,689 | 1,433 | 973 |
2022年3月期 | 19,468 | 1,734 | 1,515 | 1,236 |
差額 | 3,674 | 45 | 82 | 263 |
増加率 | +23.26% | +2.66% | +5.72% | +27.03% |
2022年3月期と2021年3月期の比較
新日本建物の2022年3月期決算短信を参照
新日本建物は2021年3月期に、前年から増益予想だったのが一転して減益になっていました。
工事が遅れたのか相手方の都合なのかはわかりませんが、物件の引き渡しが期を跨いだようで、遅れた分の売上は2022年3月期に計上されているようです。
営業利益、経常利益のわりに純利益が少ないのは、コロナ禍で苦しむ海外子会社に資金援助したからのようです。
2022年3月期は前年から繰り越された感じの売上でかさまししたことも影響しているのか、前年比で23%の売上増加になりました。
しかし条件の良い土地は地価が高騰していたり、世界的なインフレで資材が高騰していることが影響してか、営業利益、経常利益は売上高の増加から見ると微増といった感じです。
当期純利益は予想していた1,270百万円を少し下回ったものの、概ね予想通りとなりました。
特別損失があったために前年は純利益の率が下がっていただけで、2022年3月期が特別に高い利益率になったわけではないようです。
四半期毎に見ると、期末に売上が集中する傾向がある
2021年3月期と2022年3月期の比較グラフ
新日本建物の2022年3月期決算短信を参照
2022年経常利益 | 2021年経常利益 | 2022年純利益 | 2021年純利益 | |
1Q | 454 | 347 | 444 | 282 |
2Q | 853 | 224 | 680 | 191 |
3Q | -170 | 17 | -153 | 11 |
4Q | 378 | 845 | 265 | 489 |
1,515 | 1,433 | 1,236 | 973 |
2021年3月期と2022年3月期の比較表
新日本建物の2022年3月期決算短信を参照
2022年3月期と2021年3月期の四半期毎の経常利益と純利益を見てみましょう。
2022年は前年から繰り越された売上が2Qに計上されているためか、2Qの利益が高くなっていますが、概ね期末の4Qに売上、利益が集中しています。
3Qが微益もしくは赤字になるのは、毎年のことです。
期末の配当を取りに行く前に発表された3Qの決算を見ると、大抵は進捗が良くないです。
しかし期末に物件の引き渡しが集中するのか、4Qに売上を伸ばしてくることが多いので、3Qの残念な決算を見て手を引くと、裏切られることになるかもしれません。
引き渡しが遅れて大幅減益、ということもありますけど。
2023年3月期は約19%の純利益増を予想
新日本建物のWebサイトおよび2022年3月期決算短信を参照
決算年月 | 純利益(百万円) |
2017年3月期 | 669 |
2018年3月期 | 1,076 |
2019年3月期 | 1,167 |
2020年3月期 | 1,328 |
2021年3月期 | 973 |
2022年3月期 | 1,236 |
2023年3月期(予想値) | 1,470 |
新日本建物のWebサイトおよび2022年3月期決算短信を参照
2020年3月期までは利益を伸ばしていたものの、コロナ禍で減益に
新日本建物は2020年3月期まで順調に利益を伸ばしていましたが、コロナ禍の工事の遅れやインフレによる資材高騰などの影響か、2021年3月期は減益になっていました。
経済活動は徐々に再開されて、2022年3月期は2年前には届いていないものの、前年から27%の純利益増になりました。
2023年3月期は約19%増益を予想しています。
行動制限の再発やインフレによる資材高騰、調達難には注意
物件を転売する不動産業だと『仕入れが捗らなかった』『思ったほど物件が売れなかった』『なんかすごく売れた』とかで業績が上に行ったり下に行ったり、無理な計画で目標未達とかあるかもしれないですけど、新日本建物の場合は動いているプロジェクトが順調に進むかどうかです。
すでに仕入れた土地に建物を建設中で、売約も進んでいるのでしょう。
予想利益を大きく上回ることは無いと思います。
工事が遅れたり売約がキャンセルされれば下には行くでしょうけど。
行動制限の再発とか、世界的なインフレが加速して資材高騰、不足して建設が進まないとか、そういう事態には注意が必要かもしれません。
2021年3月期、目標利益は未達ながら配当金は予想額を出している
工事が予定通り進まなかったりすれば、物件の引き渡しが遅れて、売上の計上も翌期に持ち越されるなどして、業績予想の利益を達成できない可能性があります。
しかし、物件の引き渡しが遅れて予想利益を達成できなかった2021年3月期に、新日本建物は配当金を予想額から減額しませんでした。
工事の遅れなどで多少売却が遅れたとしても、予定価格で売却が見込めるのであれば、目標利益を達成できなかったとしても予想配当金額を出してくれる可能性は十分あります。
リーマンショック時のように、不動産価格が下落して安売りせざるを得ず、損失が出てしまった場合は話がかわってしまいますが。
予想配当金は26円に増額、予想利回りが6%を超える
期末配当金 | |
2016年3月期 | 0円 |
2017年3月期 | 5円 |
2018年3月期 | 10円 |
2019年3月期 | 18円 |
2020年3月期 | 25円 (45周年記念配当5円含む) |
2021年3月期 | 22円 |
2022年3月期 | 22円 |
2023年3月期 | 26円(予想) |
新日本建物のWebサイトおよび2022年3月期決算短信を参照
新日本建物の配当性向は30%以上を目途としています。
2021年3月期は増益予想から一転減益でしたが、予想配当金額を維持して45%の高い配当性向でした。
2022年3月期は35%程度、2023年3月期も35%程度を予定しています。
約19%の増益予想なので、4円増額の26円、約18%の増配予想です。
元々が5%台の高い配当金利回りが、更に高くなって6%台ですよ。
配当金権利日が近くなると株価が急騰して、利回りは低くなるかもしれないですけど。
しかし、新日本建物が高配当銘柄になったのは、ここ数年のことです。
2016年以前は0円。
配当金はありませんでした。
リーマンショック時は大赤字だったので、立ち直るのに数年かかったみたいですね。
リーマンショック以前は30%程度の配当性向です。
増益予想、増配予定、そして株価は…
19%の増益予想。
18%の増配予定。
さあ、株価は…
画像はgoogle検索結果のスクリーンショットです
ちょっと騰がりました。
決算発表の翌営業日は4%の株価上昇
決算発表の翌営業日には、16円騰がって408円になりました。
18%の増配で、4%の株価上昇です。
新日本建物の配当金は年1回、3月の期末だけで、増配の発表から10カ月以上も先のことです。
株主優待もありません。
リーマンショック時の前例もありますし、米国のリセッションなど、1年近くあると経済状況がどうなるかわかりません。
来年になって、大丈夫そうなら買えば良いですよねー。
いつまで安値でいるかもわかりませんけど。
決算発表から少し日を開けて、じわじわ上昇
画像はgoogle検索結果のスクリーンショットです
日本株価が上がっているせいか、新日本建物の株価も5月末から気持ち上がってきています。
でもまだ予想配当金利回りは6%以上です。
配当取りで高騰しそうだからと、安いうちに早めに買うか。
急落が怖いからと、多少の値上がりは許容してギリギリまで待つか。
投資スタイルは人それぞれなので、自分にあった売買を心掛けましょう。
45周年の記念配当で大幅増配した2020年の株価は…
画像はgoogle検索結果のスクリーンショットです
記念配当で25円配当だった2020年。
前年から40%近い大幅な配当金増額ということもあって、新日本建物の株価は、500円を超える高騰をしていました。
しかし…配当前にコロナ暴落でしたからね。
配当金を取りに行ったら大暴落、権利落ちでさらにドスン。
すぐにある程度は戻しているものの、高値のピークから半値以下になっていました。
まとめ
<8893>新日本建物の2022年3月期末決算でした。
配当金の権利日前以外は注目が薄いですね。
権利日前に急騰して、権利日後に急落する。
そんな傾向がありましたが、2022年はあまり株価が動きませんでした。
でも増配予定なので、2023年は動くかもしれないですね。
高い配当金が出て、株価も安定している、そんな企業があれば僕だって投資したいですけど、そういう企業は利回りは低いですよね。
利回りの高さは、リスクが高いと思われているからでしょう。
利回りの高い投資ほどリスクが高い傾向がある、という一般論を言っているだけであり、特定の銘柄、企業、業種のリスクが高いということではありません。
リーマンショックやコロナ暴落では特定の銘柄、企業、業種に限らず、多くの企業、業種で株価が下落しています。
僕としては、お金があって、株価が安くて、業績に問題なさそうなら買いたいところです。
新日本建物の前回2022年3月期3Q決算分析はこちら。
他の決算分析のページはこちら→決算分析のページ
各企業の決算内容については、公式なIR発表等でご確認ください。
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